【景表法】「メタボメ茶」と称するポット用ティーバッグの痩身効果(優良誤認)
宮崎の弁護士・中小企業診断士の田所伸吾です。
景品表示法に関する事例を紹介します。今回紹介するのは、「メタボメ茶」と称するお茶の痩身効果の不当表示に関する措置命令です。
1.事案の概要
処分日 | 2021/03/23 |
処分内容 | 措置命令 |
対象事業者 | ティーライフ㈱ |
不当表示の概要 | 「メタボメ茶」と称するポット用ティーバッグの痩身効果 |
違反法条(5条) | 優良誤認(1号) |
出典 | https://www.caa.go.jp/notice/entry/023546/ (消費者庁) |
2.景表法違反となった表示
⑴ 具体的な表示内容(抜粋)
・体型が異なる2名の人物のイラストと共に、「もう一度、あの頃のスリムな私に!」
・飲料の入ったティーカップの画像と共に、「漫画でわかる! 日本一※売れている中年太りサポート茶とは!?」及び「2年半で-43kg!! その方法を公開中!」
・飲料を飲む様子の複数の人物のイラストと共に、「スリムも!健康も!自信も!家族の絆も!取り戻す これはあなたの物語です。」、「健康にうれしい成分が桁違い! 雲南省ハニ族のプーアール茶」
・ダイエットプーアール茶の茶葉における重合カテキンの含有量を示すグラフ及びダイエットプーアール茶と緑茶における没食子酸の含有量の割合を比較して示すグラフと共に、「お茶のルーツでもある中国雲南省の少数山岳民族であるハニ族が栽培する特別なプーアール茶。その茶葉には、とってもうれしい〝重合カテキン″や〝没食子酸″などが存在することがわかりました。」
・「他にはない中年太りのためのブレンドだから!」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_210323_01.pdf
上記の表示について、消費者庁は「あたかも、本件商品を摂取することにより、本件商品に含まれる成分の作用による著しい痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。」と判断しています。
⑵ 実際
消費者庁は、「ティーライフに対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」としています。
※ 表示についての弁護士コメント
今回の表示は、
・「スリム」という表現や体重の減少値を記載しており、痩身効果がある旨を明示している
・また、添付の資料によると、「国内の茶葉はカテキンが少ない」→「雲南省ハニ族のプーアール茶を発見」というストーリーや、両者の成分を比較するグラフによって、痩身効果を得られる根拠が本件商品に含まれる成分の作用によるものであることを明示している
といえます。
⑶ 打消し表示について(抜粋)
・「※このストーリーはフィクションです。」
・「※適度な運動と食事制限を取り入れた結果であり実感されない方もいらっしゃいます。」
・「※個人の感想であり実感されない方もいらっしゃいます。」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_210323_01.pdf
消費者庁は、上記打消し表示について、「当該表示は、一般消費者が前記アの表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではない。」としています。
※ 打消し表示についての弁護士コメント
・添付資料を見ると、強調表示のすぐそばに打消し表示の記載があるものの、強調表示に比べて文字も小さく(正確には分からないが8ポイント未満ではないかと思われる)、背景と十分に分離されていないため見にくいです。
・また、「※適度な運動と食事制限を取り入れた結果であり実感されない方もいらっしゃいます。」という打消し表示は体験談の箇所にありますが、体験談の内容は「いつもの甘いお茶を本件商品に変えたら4か月で5㎏減→軽い運動も取り入れながら続けたら2年半で43kg減」というものです。これを「適度な運動と食事制限も併用しなければならなかった」と捉えるのは困難であり、打消し表示自体が強調表示と矛盾していて意味をなさないと言わざるを得ません。
⑷ 体験談について(抜粋)
・人物の前後比較の画像と共に、「メタボメ茶を飲む前の○○○さん」、「96kg▸53kg -43kg減」、「4ヶ月で5kg減! 2年半で43kg減!! ○○○○○さん153cm」
・飲料の入ったコップを手にする人物の画像と共に、「全然大変じゃありませんでした!」
・体験談として、人物の画像と共に、「約3ヶ月で 60kg▸56.3kg -3.7kg減」、「○○さん 161cm」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_210323_01.pdf
消費者庁によると、「当該体験談は、本件商品を摂取したことによるものではなかった。」とのことです。
※ 体験談についての弁護士コメント
そもそも本件商品を摂取した体験談ではないとのことなので、妥当か否かを論じるまでもありませんね。
3.全体を通しての所感
消費者庁の発表を前提とすると、本件においては、本件商品の成分により痩身効果がある旨を明確に表示しており、不実証広告規制に対する資料提出もしていることから、事業者としては表示に根拠があると考えていたものと思われます。実際、下記のとおり、事業者は、措置命令に対して取消訴訟等を行うと表明しています。
もっとも、事業者の根拠資料の内容は不明であるものの、そもそもお茶を飲むだけで2年半で43kgもの体重減少があるとはにわかに考え難いです。実際、用いられている体験談は虚偽のものであったということなので、結論としては不当表示という評価は免れないのではないかと考えます。
4.その他
・事業者の2021年3月23日付の適時開示によると、取締役会において本件措置命令に対する取消訴訟の提起及び執行停止の申立を行うことを決議したとのことです。今後の展開を追っていきたいと思います。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3172/tdnet/1946434/00.pdf
・もっとも、上記発表がなされているのはIR情報サイトであり、消費者がよく見るであろう同社の通販サイト(https://www.tealife.co.jp/)には今回の措置命令についての記載がありません。もちろん、訴訟はこれからなので結論は今後出ることにはなりますが、消費者に対する表示が不当ということで措置命令が出された事実自体を消費者が見るであろうサイトに掲載しないという点については、個人的には、コンプライアンスの面で疑問を感じます。