【景表法】「洗たくマグちゃん」と称する商品等の洗浄効果(優良誤認)

宮崎の弁護士・中小企業診断士の田所伸吾です。

景品表示法に関する事例を紹介します。今回紹介するのは、「洗たくマグちゃん」と称する商品の洗浄効果の不当表示に関する措置命令です。

1.事案の概要

処分日2021/04/27
処分内容措置命令
対象事業者㈱宮本製作所
不当表示の概要「洗たくマグちゃん」と称する商品等の洗浄効果
違反法条(5条)優良誤認(1号)
出典https://www.caa.go.jp/notice/entry/023999/(消費者庁)

2.景表法違反となった表示

⑴ 具体的な表示内容(抜粋)

例えば、洗たくマグちゃんについて、容器包装において以下のように表示。

・「ご家庭の水道水がアルカリイオンの水素水に変身!洗剤を使わなくても大丈夫なお洗濯」

・「部屋干しのイヤな臭いをスッキリ解消!」

・「菌の抑制」及び「除菌試験により99%以上の抑制効果が確認されています。」

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210427_01.pdf

上記の表示について、消費者庁は「あたかも、本件3商品(洗たくマグちゃん、ベビーマグちゃん、ランドリーマグちゃん)を使用して洗濯すれば、本件3商品の効果により、洗濯用洗剤を使用して洗濯した場合と同程度に洗浄する効果、部屋干し臭の発生を防止する効果及び菌を99パーセント以上除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。」と判断しています。

(2) 実際

消費者庁は、「宮本製作所に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」としています。

※ 表示についての弁護士コメント

今回の表示は、洗たくマグちゃんを使うことによって、洗剤を使用した時と同じように洗浄効果・防臭効果・除菌効果が得られる、とストレートに表示しているといえます。

⑶ 打消し表示について(抜粋)

・「※但し特定の菌に限る」

・「泥汚れやファンデーション、機械油などの汚れは別途洗剤を使って部分洗いをお願い致します。」

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210427_01.pdf

消費者庁は、上記打消し表示について、「当該表示は、一般消費者が前記の表示から受ける本件3商品の効果に関する認識を打ち消すものではない。」としています。

※ 打消し表示についての弁護士コメント

添付資料によると、「除菌効果は99%以上!」という強調表示のすぐ下に「※但し特定の菌に限る」という打消し表示の記載があります。 もっとも、後記のように、今回「優良誤認」と言われている理由は、家庭用洗濯機での実験をしていなかったにもかかわらず、洗濯機で洗剤を使用した時と同じような洗浄効果等が得られるような表示をしていた点にありますので、この打消し表示がされていたところで消費者へ誤認を与えることには変わりはない、ということになります。 (なお、「泥汚れや~」という打消し表示は、添付資料内には見つけることができませんでした。私が見落としているだけかもしれませんが…。)

3.処分等の具体的内容

消費者庁の発した措置命令の概要は、次の通りです。

①洗たくマグちゃん等に関する上記表示が、それぞれ、本件3商品の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。

②再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。

③今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、上記表示と同様の表示を行わないこと。

④①に基づいて行った周知徹底及び②に基づいて行った措置について、消費者庁長官に文書で報告すること。

4.全体を通しての所感

措置命令を受けた宮本製作所は、 「誤った表示が行われた原因は、社内の試験設備及び環境が十分でなかったため、本件商品の洗浄・除菌・消臭効果に関する実証実験の内容、条件、範囲等に、実際の商品の使用環境と異なるもの等があったこと、広告表示の内容に実証実験の結果と合致しないものがあったため、適切な広告表現を行うことができていなかったことにあります。」 と発表しています(同社ウェブサイトのお知らせにおける「『洗たくマグちゃん』の消費者庁の措置命令についてお詫びとお知らせ」の3⑶①参照)。

この発表では具体的な原因は分かりませんが、新聞報道によれば、 「消費者庁が根拠の提示を求めたところ、1リットル未満の小さなビーカーでの実験結果しかなく、家庭用の洗濯機での効果は確認できなかった。」 とのことでした(2021年4月28日付宮崎日日新聞より)。 すなわち、今回の表示は、家庭用洗濯機での効果が未確認であったにもかかわらず洗浄効果などをうたってしまったため、商品の効果について消費者に著しく優良であるとの誤認を与えるおそれがあるもの、とされてしまったといえます。 このことから、商品の効果効能を表示においてうたうためには、その商品が実際に使用されることが予測される環境において実証実験を行うことが重要である、と言えます。

5.その他

宮本製作所は、措置命令を受けて早速、新たな実証実験の内容と商品パッケージの変更を発表しています。

宮本製作所ウェブサイト
2021.04.28 洗たくマグちゃん新パッケージにつきまして

措置命令を受けてしまったことは残念ですが、それに対して素早い対応を行い、顧客に対して安心感を与えるリリースを行っている同社の対応は好感の持てるものであり、リスクマネジメント的にも良い対応であると思われます。